お客様導入事例

TOYO TIRE株式会社 様

HPC基盤を3倍に増強し、デジタル開発を加速

TOYO TIRE株式会社 様

所在地:兵庫県伊丹市藤ノ木2丁目2番13号
URL:https://www.toyotires.co.jp/

TOYO TIREが、200ノード/9,600コアを備えたHPE Cray XD2000による「第7世代HPCシステム」をHPE GreenLakeの月額費用モデルで導入

TOYO TIREが、自動車タイヤの設計・開発プロセスの更なる高度化・高速化を担う「第7世代HPCシステム」を稼働させた。自社開発のCAE(Computer Aided Engineering)アプリケーション「TOYOFEM」を中心に、構造設計や材料設計など多様なシミュレーションを担う本環境には、クラス最高水準の性能と拡張性を持つインテル® Xeon® スケーラブル・プロセッサーを搭載するHPE Cray XD2000が採用されている。さらに、HPE GreenLakeによるサービス提供型のメリットを活かしたHPCシステム導入、エキスパートチームによる高度な技術サポートなど――HPEのフルポートフォリオが活かされたデジタル開発の先進事例を紹介する。

業種

製造

 

ビジョン

シミュレーション技術を活用したデジタル開発を推進し、自動車タイヤの設計・開発プロセスの更なる高度化・高速化を実現する

 

戦略

新たに「第7世代HPCシステム」を整備し、コア数/スループットを3倍に増強するとともに、アプリケーション単位の性能の大幅な向上を図る

 

成果

• クラス最高水準の性能と拡張性を持つインテル® Xeon® スケーラブル・プロセッサー搭載の高密度型サーバーHPE Cray XD2000を採用し、従来比3倍の9,600コアを既存サーバールームに構築

• HPEのエンジニアチームがTOYO TIRE独自のCAEアプリケーション「TOYO-FEM」をチューニングし性能を約3倍に向上

• HPE GreenLakeにより、ハードウェア、ソフトウェア、各種サービスのすべてを月額費用化

• シミュレーション主導型の製品開発の推進を通じて、自動車タイヤの設計・開発プロセスの高度化・高速化に貢献

ご導入製品

HPE Cray XD2000

HPE GreenLake


従来比3倍、9,600コアを備えた第7世代HPCシステムを構築

 

TOYO TIRE株式会社が、「第二の創業」を掲げてグローバル戦略を加速させている。国内工場・米国工場の増強に続き、2019年にドイツにR&Dセンターを新設。2022年にはセルビアで新工場を稼働させるなど競争力の高いグローバル供給体制を確立させた。さらに、日・米・欧の3極が連携する技術開発基盤体制の強化を通じて、モビリティ分野に特化した事業成長を着実に前進させている。技術開発本部 先行技術開発部 部長の田中嘉宏氏は次のように話す。

「世界的なEV化の進展や環境性能への要求が、シミュレーションを活用したタイヤ開発の高度化・高速化への期待をいっそう高めています。私たちは、理想的なゴム材料を設計するための基盤技術『ナノバランステクノロジー』、タイヤ開発プロセスを高度化するシミュレーション基盤技術『T-MODE』に代表される独自技術を進化させるとともに、強力な計算環境を整備してTOYO TIREのデジタル開発を推進しています」

TOYO TIREが2023年9月に運用を開始した「第7世代HPCシステム」は、ナノレベルの材料解析や複雑なデザインを持つタイヤの構造解析をより高速かつ高精度で実行し、より多くの設計者が柔軟に利用できる環境として完成された。

「第7世代HPCシステムは、前世代比3倍となる9,600コアを備え、スループットを大幅に強化したことが最大の特徴です。本システムでは、3D CADを扱う設計者が、自身のワークステーションから『TOYO-FEM』をはじめとするCAEアプリケーションを自由に利用して、設計とシミュレーションを行き来しながら精度を高めていくことができます。より多くの設計者が、より大きなモデルを使用し、より多くの頻度でシミュレーションを実行できるようになったことが重要なポイントです」と田中氏は話す。

TOYO TIREは、CADとCAEのシームレスな連携、SPDM(Simulation Process Data Management)による設計データとシミュレーションデータの統合管理、性能値から設計仕様を導き出すAIモデルの開発支援環境などを次々と整備し、それぞれの成熟度を高めながら大きな成果をあげてきた。

「コア数/スループットの増強は、シミュレーションを軸にしたデジタル開発を加速させるために欠かせないものです。私たちは、市場競争力の高い自動車タイヤづくりを支える、より高速な設計・開発プロセスを確立するために、第7世代HPCシステムをフルに活用していきます」(田中氏)

シミュレーションを軸にした、デジタル開発を加速

 

自動車タイヤは多種のゴムや繊維材から複雑に構成されており、何らかの力が加えられたとき大きく変形する特徴を持つ。高い精度でその性能を予測するには、材料や構造とともに自動車タイヤならではの挙動を考慮したシミュレーションを行う必要がある。技術開発本部 先行技術開発部 CAEグループ 副グループ長の狩野康人氏は次のように話す。

「転がり抵抗性能(低燃費性)とグリップ性能(安全性)を高次元で両立させることは、自動車タイヤにおける普遍的なテーマですが、近年では耐荷重性、耐摩耗性、静粛性への要求も高まっています。EV化の進展は、車重の増加によりタイヤの摩耗を早めるだけでなく、エンジン音がないため走行中にタイヤが発する音を耳障りに感じさせるのです。こうした状況下で、いかにシミュレーションの精度を高めて早期に目標性能を達成し、試作の回数を減らして開発スピードを高めていくかが私たちの大きなチャレンジです」

「シミュレーションの高精度化と徹底活用」「高度化する計算要求、増大し続けるジョブ数に応えるリソースの確保」が、第7世代HPCシステム整備における基本方針となった。

「空気抵抗を減らして燃費を向上させるには、タイヤと車体を一体化させたシミュレーションが不可欠です。また、タイヤが発する音を抑えるには、タイヤが変形した後に空気の流れがどう変わるかを正確に観察する必要があります。コア数を従来の3倍に増強した第7世代HPCシステムでは、大規模シミュレーションモデルを容易に扱えるようになり、流体と音響など複数の解析手法を連成させるようなケースでも大きな効果を発揮します」(狩野氏)

第7世代HPCシステムの計算ノードには、クラス最高水準の性能と拡張性を持つインテル® Xeon® スケーラブル・プロセッサーを搭載する「HPE Cray XD2000」が採用された。2Uのシャーシに2ソケットサーバーを4ノード収容可能で、HPC分野で豊富な実績を持つ高密度サーバーである。

TOYO TIRE株式会社
技術開発本部 先行技術開発部
CAEグループ 副グループ長
狩野 康人 氏 博士(理学)

TOYO-FEMのソースコードを改修し、シミュレーション性能を約3倍に

 

計200ノードのHPE Cray XD2000からなる第7世代HPCシステムは、前世代と同じく本社に隣接したタイヤ技術センター内に構築された。技術開発本部 先行技術開発部 CAEグループ長(当時)の原幸造氏は次のように話す。

「コア数を3倍に増強したにも関わらず既存のサーバールームに収容できたのは、高密度型サーバーによる省スペース効果があったからこそと言えるでしょう。HPEのエンジニアチームには、システム停止時間を最小に抑えながら、計画通り安全に200ノードの導入・稼働を完遂してもらえました」

新システムには、最新CPUの性能を最大まで引き出すために様々な工夫が施されている。InfiniBand HDRによる高速なノード間接続、HPE Parallel File System Storage(計230TB)によるI/O性能の強化はその代表例だ。原氏は、「多くの設計者が同時にジョブを投入することを想定し、十分なネットワーク帯域と多重アクセスに耐えうる高性能なストレージ環境を整備した」と話す。

「第7世代HPCシステムの導入に際して、HPEのエンジニアチームにCAEアプリケーション『TOYO-FEM』のチューニングを依頼しました。コンパイラや数値計算ライブラリの最適化に加え、ソースコードにまで踏み込んで並列処理の効率を高めた結果、従来の3倍近い高速化を達成できたことに驚かされました。さらに、性能値からタイヤの構造・形状・パターンといった設計仕様を導き出す『逆問題』の計算も大幅な予測精度向上が期待できます。これらは、システムの増強だけでは到底達成できない成果です」と狩野氏は話す。

TOYO TIREが独自に開発した「TOYO-FEM」は、シミュレーション技術を集積したプラットフォーム「T-MODE」の中核を担うCAEアプリケーションである。TOYO-FEMを利用すれば、設計者は自分が設計したタイヤがどのような転がり抵抗性能やグリップ性能、耐摩耗性を備えているかを予測できる。

「新システムでは、設計者が利用する大規模シミュレーションの計算時間を最大2分の1以下に短縮できるようになり、設計者の業務効率が大きく改善しました。土曜・日曜にかかることなくその週のうちに次の手を打てるなど、設計・開発プロセス全体で非常に大きなメリットが得られています。今回のプロジェクトを通じて、HPEのエンジニアチームの技術力の高さを改めて認識できました」と田中氏も評価する。

TOYO TIRE株式会社
技術開発本部 先行技術開発部
部長
田中 嘉宏 氏 博士(工学)

HPE GreenLakeによるサービス提供型でHPCシステムを導入

 

TOYO TIREでは、第7世代HPCシステムの整備に際してHPE GreenLakeを採用し、ハードウェア、ソフトウェア、各種サービスまでを包括的に「サービス提供型・月額費用モデル」で導入した。

「大規模なHPCシステムでは、コスト面で依然としてオンプレミスに明らかな優位性があります。『計算リソースはあればあるだけ使いたい』という私たちのような環境であればなおさらです。HPE GreenLakeを採用することで、全体のコストを抑えながら、クラウドと同等の月額費用モデルにより社内の事務手続きをシンプル化できたことにもメリットを感じています」と狩野氏は話す。

第7世代HPCシステムは、TOYO TIREのデジタル開発へのチャレンジを支えていく基盤として重要な役割を担っていく。「シミュレーションに対する設計者の期待はかなり高まっている。計算量が増やせるためAIモデルの学習もさらに進むだろう」と田中氏は手応えを示しつつ、次のように結んだ。

「自動車業界全体がデジタル開発への取り組みを加速させています。自動車メーカー様へタイヤの数値モデルを提供するケースも増えており、試作や物理試験をCAEに置き換えていく流れはさらに進んでいくものと考えています。私たち自身も、試作したタイヤの性能データを計測するのではなく、シミュレーションから同品質のデータが得られるようさらに精度を高めていきたいと考えています。第8世代HPCシステムの構想にも着手しました。優秀なエンジニアチームをはじめ、HPEはTOYO TIREにとって欠かせないパートナーです。これからも私たちのデジタル開発へのチャレンジを支え続けてもらえることを期待しています」

TOYO TIRE株式会社
技術開発本部 先行技術開発部
CAEグループ長(当時)
原 幸造 氏

(写真左より)

TOYO TIRE株式会社 技術開発本部 先行技術開発部 CAEグループ長(当時) 原 幸造 氏 / TOYO TIRE株式会社 技術開発本部 先行技術開発部 CAEグループ 副グループ長 狩野 康人氏 博士(理学) / TOYO TIRE株式会社 技術開発本部 先行技術開発部 部長 田中 嘉宏 氏 博士(工学)


ご導入製品情報

HPE Cray XD2000

HPE Cray XD2000は、高いコンピュート能力が求められるワークロードを優れた柔軟性と効率性で高速化し、データからより多くの価値を引き出します。


HPE GreenLake

HPE GreenLakeは、エッジ、コロケーション、データセンターでオンプレミスのワークロード向けに、従量制課金モデルでフルマネージドのパブリッククラウドサービスとInfrastructure as a Serviceを提供します。


本件でご紹介の日本ヒューレット・パッカード製品・サービス

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